難しい作業を簡単にするための7つの原則

「何のためのデザイン?」には他にも示唆深い話がのっているのだが、それらはすっとばしていきなり最後に書かれていた「難しい作業を簡単にするための7つの原則」に飛ぶ。

難しい作業を簡単にするための7つの原則
1.外界にある知識と頭の中にある知識の両者を活用する
2.作業の構造を単純化する
 −作業は以前のままで、メンタルエイド(思考、記憶の手助け)を利用できるようにする
 −これまで目に見えなかったものを見るようにして、フィードバック/コントロール能力を高める
 −作業は以前と同じままで自動化する
 −作業の性質自体を変更する
3.対象を目に見えるようにして、実行の隔たりと評価の隔たりに橋をかける
4.対応づけを正しくする
5.自然の制約や人工的な制約など、制約の力を利用する
6.エラーに備えたデザインをする
7.すべてがうまくいかないときは標準化する


乱暴にまとめると、「自分の力だけに頼らずに、人が理解するのに活用しているものを最大限に活用すると同時に、うまくいかない場合もあることを想定しておきなさ」ということになるのだろうか。

ここで興味深いのは2である。「作業の構造が単純になる」というのは、デザインする立場からすると自動化なのだろうが、それは利用者からすると必ずしも単純になったとは受け取られない、ということだ。利用者からすると自分の持っている(外界から入手可能な)知識を活用したり、うまくいかなったときに悪いポイントが見えるほうが、単純化につながる、ということらしい。もうちょっと飛躍させると、「利用者を信じなさい」ということなのだろう。

これは結構重要な話だ。私たちは「相手のことを考えて○○しなさい」という。とすると、手取り足取りサポートすればよいと思ってしまうが、必ずしも提供者側の「手取り足取り」は利用者側の「余計なおせっかい」と同義なのかもしれない。「相手のことを考える」ということは、相手の概念モデルを知ることであり、対応付けの仕方を知ることであり、そしてどこでフィードバックされるとよいのかを知ることなのだろう。


誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)

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