大いなる不安定


大いなる不安定

大いなる不安定


巷で話題?のルービニ「大いなる不安定」を読了した。それにしても、書評等を見てもルービニの名前は全面に出るが、共著者の名前はほとんど出てこない。かわいそうな共著者・・・。


読後感は、悪い本ではないが、なぜ話題になるのかもわからない、といったところか。


よい点は、巨視的に今回のリーマン・ショックを捉えている点。そして、問題の分析だけでなく、対策もかなり巨視的に行っている点だ。確かに今回のリーマン・ショックは、その影響を受けた私たちにとってはショックそのものだが、これまでの経済の歴史で見られた「バブル」と「バースト」の一つと見れば、確かにその通りだ。ここであまりヒステリックに「今回のは特別!」と言ってしまうと、問題を見誤る。


一方で、正直あまりにまともな内容なので、何で今この時点でこんなに話題になるのかはよくわからなかった。こういう時には、いわゆる「きわもの」系が注目を浴びることが多いだろうが、正統派なのに注目を浴びるのは珍しい。確かに経済学の世界では「知られた」存在だったのだろうが、世間的にはそれほど著名な方ではなかったような気がする。そういう人がこうした普通の内容の本を書いて注目を浴びることは、悪いことではないが不思議だ。


最後に、売り方について一言。もう「リーマン・ショックを言い当てた人」といううたい文句はもうやめようよ。自称「リーマン・ショック予言者」は、続々現れている。そんな人々の中に埋もれるようなキャッチコピーは、その人の信頼性を高めるのにはまったく役に立たない。私たちが読みたいのは、予言を当てた人のお告げではなく、現状の捉え方や問題の掘り下げなのだから。