Concerts(Bregenz) / Keith Jarret

ブレゲンツ・コンサート

ブレゲンツ・コンサート

キース・ジャレットのピアノ・ソロで最初に何を聴くかといえば、間違いなくケルンだろう。では、次に進みたいという奇特?な方には何をおすすめすればよいだろうか?

たぶん、このブレゲンツになるだろう。初心者が思わず「Radiance」などに手を出したら、大変なことになる。

なんといっても、短い。総時間にして50分未満なのは、たぶんこれだけだろう。ケルンは最初だから別として、やっぱり一時間以上キースの即興に付き合うには、それなりの体力と覚悟がいる。

さらに、ほかのキースのピアノ・ソロと比べて軽いことも、お勧めの理由だ。「軽い」といっても、「軽薄」という意味ではない。ある意味他のピアノ・ソロが「荘厳」というのに比べて「軽い」という意味だ。たとえて言えば、他の作品が重々しい雰囲気だとすれば、このブレゲンツは秋の晴れ間の雰囲気が漂う作品なのだ(といっても、その雰囲気は最初の10分くらいで、それからはふつうのキース・ワールドに突入するのだが)。ただ、その後も結構味付けは軽めだ。

とは言いつつ、キースのソロ・ピアノではお約束とも言われている?アバンギャルドな展開もある。ちょうどパート1とパート2を挟んだ10分程度だ。それにしても、このCDでは、パート1がいつ終わって、パート2がいつ始まるかまったくわからない。たぶんLP時代の都合で、途中で無理やり区切ったのだろう。こういった現象は、この前のCDではよく見られる。

そして、三曲目のUntitledへ。と、このタイトルは思わず突っ込みたくなる。だいたい、キースのピアノ・ソロはほとんど「Untitled」なのではないか? それを無理やりパート1とかパート2とかつけているだけではないか。それを、わざわざなぜこの曲だけUntitledとつけたのだろうか? 曲自体は、キースのアンコールによく見られる、左手でリズムを刻み始め、そのリズムに沿ってメロディーを載せていくというパターン。それにしても、キースの左手は創造力の源であることを改めて実感させられる。現に、この曲は左手のリズムが主役で、メロディーラインが左手をより魅力的にみせているように感じる。

最後は、Heartland。この一曲があるから、ブレゲンツをおすすめするわけでもある。Untitledで盛り上がった気分を少し鎮めながら、違った感動へいざなう。キースも唸り声全開だ。それにしても、この曲はこのコンサートが初出なのだろうか?? 不勉強なので、オリジナルがどこにあるのか判別できないが(キースの曲であることは確か)、もしこのコンサートでいきなり編み出されたなら、やはりタイトルはつけたくなるだろう。実際、キースのソロで題名がつくことはめったにない。

と、実際に曲を聴きながら書いてみた。確かに、キースの即興を聴く足がかりにはちょうどよい作品だ。時間も短いし。