ドラッカーの講義 1991-2003


年明けなので、重鎮ドラッカーを読むことにしました。で、選んだのが、これ。

ドラッカーの講義(1991-2003) ~マネジメント・経済・未来について話そう~

ドラッカーの講義(1991-2003) ~マネジメント・経済・未来について話そう~


正直に言えば、自分はよいドラッカーの読者ではありません。何冊か読んでわかったような気になり、調べもの以外の用途では10年以上手に取らなくなりました(当然?「もしドラ」も読んでいません)。


ドラッカーが主張していることの多くは、現在になってみれば目新しいことではありませんし、個人的に将来を予測することにあまり価値を置いていないので、彼がどんなことを予測しているのかも興味がありません。それがあまりよい読み手になれなかった理由です。


しかし、本書を読んで、結構もったいないことをしたと反省しています。確かに彼が主張している「顧客の立場からものを見て、考える」「現代は知識労働の時代」という主張は今となっては当たり前のことです。しかし、本書を読むとそこに至る洞察の深さを見て取ることができます。例えば、「過去と現代のもっとも大きな変化はテクノロジーの進歩ではない。主体的に選択することのできる余地が大きくなったことだ」というようなくだり。ここに、ドラッカーの人を見る眼の鋭さを感じるのです。本書の中で、ドラッカーは自らを「社会生態学者」と呼んでいたかと思いますが、自分は「人間生態学者」と呼んだ方がしっくりきます。ドラッカーが組織や戦略について語っているときも、常に人がどのように考え、行動するかを念頭に置いているからです。この点がドラッカードラッカーである所以のような気がします。

また、個人的に印象に残ったのが、知識労働のはじまりが看護師である、というくだり。ここも下手に学者とか言わずに「知識労働」とはどのような特質を備えているのかを見通したドラッカーの姿を見ることができます。

このように、本書はドラッカーの著作ではありませんが、直接ドラッカーに触れる第一歩として最適なような気がします。