私の履歴書 科学の求道者

いまだに正月の話になってしまいますが、今年の正月はドラッカーの講義に加え、次の本も読んでみました。

本書は、日経新聞に毎日連載されている「私の履歴書」を集めたものです。本書は、いわゆる科学者特集ということで、

  • 今西 錦司
  • 福井 謙一
  • 河合 雅雄
  • 西澤 潤一
  • 小柴 昌俊

の5名の「私の履歴書」が一挙に掲載されています。

実は、自分は「私の履歴書」が結構好きで、気に入った人の場合は確実に読むようにしています。毎日これだけコンパクトに自分の生い立ちや考え方をまとめてもらえるのは、非常にありがたいところです。

日経という紙面の関係からか、どうしても経営者のものが多くなりますが、個人的に興味深いのは学者系のものです。私たちとは一味違った知的活動を行い、それをどのように成果に結び付けていくかを知るというのは、非常に興味深いものです。

以前、白川静梅棹忠夫など、人文科学系の学者の「私の履歴書」を読みましたが、その生き様の壮絶さに感嘆したものです。人文系の学者と言っても、机にかじりついて本を読むだけではない、現場へ足を運び、論敵と文字通り戦う姿は感動的なものでした。

本書も非常に興味深いものでした。まず、今西錦司氏の破天荒な生き様に度肝を抜かれます。そして、彼のもとで育った梅棹忠夫川喜田二郎河合雅雄などの生き方がまた破天荒なのも十分うなずけます。

次はノーベル化学賞を受賞した福井謙一氏です。最後に登場する小柴氏にもみられる、戦う科学者の姿が見えてきます。

続いて、サル学の河合雅雄氏。個人的には本書でこの人の「私の履歴書」が一番面白かった。師の今西錦司を上回る破天荒さ。アフリカでのヒヒの研究の場面は科学者というより冒険家です。

そして、西澤潤一氏と続きます。今回の5名の中ではもっともなじみの薄かった人ですが、何とこの人が光通信の礎を築いたのかという新たな発見がありました。

最後はおなじみ?の小柴昌俊氏ですが、この人はノーベル賞受賞以上に、巨大気球をマネジメントした人として記憶に残りました。

理科系に疎い自分としては、彼らの業績について理解することは到底できませんが、その壮絶な生き様は十分すぎるほど伝わってきました。新年に読むのにふさわしい一冊だったと感じています。

なお、まったくの余談ですが、仮に「死ぬまでに実現したい○○個のこと」を自分に当てはめてみると、その中の一つに日経の「私の履歴書」に寄稿するというのがあります。現状を考えると、「何寝言言っているんだ」という状況ですが、夢を見るのもよいでしょう。今後ますます頑張っていこうという思いを新たにした一冊でした。