[コミュニケーション]コミュニケーションの内容の構成要素

コミュニケーションの改善方法として、受け手の状況に基づいて伝えるべき内容、コンテキスト、チャネルを決定するという観点が必要である。但し、内容そのものについては、幹のようなものをしっかりさせておかないと、受け手の顔を見て話をするだけになってしまい、自分の言いたいことが伝えられない恐れがある。では、内容の幹とはどのようなものか。

私たちはよく「そんなの5W1Hだろ」とまとめてしまうが、別のやり方もある。「理解の秘密」の第八章に書かれているのがそれだ。本書では、内容の幹を

1.使命(Mission)
2.最終目的(Destination
3.手順(Procedure)
4.時間(Time)
5.予測(Anticipation)
6.失敗(Failure)

の6つとしている。本書は「コミュニケーション」というよりも「インストラクション」という立場で記載しているからこのような要素が出てきているのだが、一般的なコミュニケーションの内容においても、十分該当するものだろう。簡単に内容を説明すると、以下のようになる

使命は、伝えようとしている目的。そもそも何のために伝えるのか、ということ。
最終目的は、伝えたことを実行した結果得られるもの。受け手が得られるギフト。
手順は、最終目的の実行の仕方。
時間は二つの意味がある。一つは実行に要する時間(所要時間)。もう一つは伝えることを実行する開始/修了時間。本書ではこの二つの意味をまぜこぜに使っている。
予測は、最終目的に至るまでにマイルストーン的に確認できるもの。
失敗は、予測とは逆に最終目的に至っていないことをチェックできるもの。「こうなっていたらおかしい」とか。


もちろん、どの場面でもこれらをすべて伝えないといけない、というわけではなく、受け手との共有度合いによっては省略も可能になる。何の準備もできていない受け手に対してはすべて説明しないと、何のために説明されているのかわからないだろう。一方、自ら分からないことを聞きにきた受け手に対しては、使命や最終目的は省略可能になる(と言いつつ、このあたりで意見の相違があって話が混乱することも多いから、説明しておいたほうがよいのだろうが)。


この枠組みを見ると、「指示的な内容だけしか当てはまらず、一般のコミュニケーションについては該当しないのでは」という疑問を持つかもしれないが、本書では巧妙?にもあらゆるコミュニケーションに該当できるよう、伝える内容を時間軸で3つにわけている。本書に書かれた内容をそのまま記載する(従って、インストラクション→コミュニケーションと読み替える必要あり)


・過去に関するインストラクション
・現在にかかわるインストラクション
・未来指向のインストラクション


つまり、状況説明的な内容でも、それは過去に関するインストラクションなのだ、ということ。例えば、「雨が降っていますね」という内容も、「今雨が降っているということを理解しなさい」ということだから、過去に関するインストラクションに該当する。従って、本来なら「私は今、あなたに雨が降っていることを理解してもらいたい。それがわかると次に言おうとしている意味がわかるだろう。窓の外を見ればすぐに私の言っていることに同意するはずだ。おっと、反対側の窓ではないよ」という内容が伝えるべきことをすべて網羅したものだろうが、日常会話ではそこまでは言わないだけである。


ということで、コミュニケーションの内容に関しては、上記の6要素を抑えておけば概ねモレはなくなるが、いつもそんなことは言わないので、自分の言っていることが伝わっていない場合のチェックリストとして活用するのもよいだろう。


なお、本書では続く第九章で具体的な伝え方の話になっているが、どちらかといえばビジュアルの使い方的な内容になってきているので、ここはすっとばす。すると、第十章で優れたインストラクションの要件があがっている。これまた示唆深い内容だが、例によってきれいにまとまっているわけではないので、次回エントリーではそれを整理してみることにする。