[コミュニケーション]よいコミュニケーションの要素

「理解の秘密」では、第十三章で「忘れがたいインストラクター」として、よいインストラクターとなる要素を列挙している。しかし、これがまたいろいろな人にいろいろな質問の仕方で聞いたものを列挙しているだけなので、いろいろあってわかりにくい。ということで、ここも整理してみたいのだが、これがなかなか難しい。微妙に同じような微妙に異なることをあげているからだ。

どれだけうまくできるかはわからないが、まずはやってみよう。なお、具体的な要素については、
・筆者自身が優れたインストラクターと感じる100人に聞いたこと(252ページ)
・グレッグ・シー(プラント・レコーディング・スタジオのパートナー)(256ページ)
・バリー・ジェイムス・リネット(マイクロソフト社)(257ページ)
である。


1.受け手への配慮
まずは、受け手に対する配慮としていくつかあがっている。その中でも、特に受け手の心理面に対する配慮があげられている。
 ・聞く者がそのことを早く知りたいと思っていること
 ・聞く者が集中できる時間より短い
 ・予想:相手に通知する、相手を捕まえる
 ・関心の維持:ユーモア、サスペンス、チャレンジ、幻惑を使う

2.内容の工夫
もちろん内容のも一工夫必要である。重要なのは「表現の引き出し」を多く持ち、それを臨機応変に活用できるようにしておく、ということだろうか。その上で、同じことを伝えるなら短いほうがよい、ということだろう。
・ある分野の知識をほかの分野に応用できるよう、パターンで見ることを教えることができる
・ひとつのアイディアをいろいろに表現すること、つまり三次元的な像を示すことができる
・最小限の伝え方であっても、それが概念として明確であること
・おもしろく、適切で、セクシーで、明確であること
・洋服がけ:相手がその上にディテールをかけるために、非常に簡潔な心のモデルを与える
・比較と対照:良い例と悪い例を出す

3.「伝える」全体像の把握
受け手と中身がある程度固まったら、どのような伝え方がよいかを決定しなければならない。それは事前に決定することもあるし、その場で決定する必要もある。
・大きな構図、すなわちインストラクションの与えられるコンテキストを説明できる
・利益:いかに「相手」が利益を受けるかを示す。相手に動機を与える。「聞く者」に焦点をあてる
・流れ:ストーリーを組み立てる
・判断:ペース、順序、そして一部を飛ばすかどうかを判断する

4.受け手との関係性
受け手とは内容を通じてだけの関係性だけに注意すればよいわけではない。
・信頼感を植えつけることができる
・実行:フィードバックを受け止める

5.結果
伝えた結果が重要である。相手が何を学び、何を学ぶ必要があるかを理解しなければならない(ついでに、何を学べばよいかを理解しておくとさらによい)
・正しい質問の仕方を教えることができる
・能力を積み上げる:相手が学んだ能力を忘れずに使い続け、新しい能力につなげていくようにする

6.自分の心構え
伝えるといっても、無味乾燥に行えばよいわけではない。自分の個性や感情を示すことでつたない内容でも理解してもらえる可能性は高まる。
・自分の関心対象に熱意をもっている
・誤りを認め、リスクを犯すことを奨励する
・ときには監修とは逆の方向にすすむことができる


これらはGoodをGreatにするようなものが多く、基本をマスターしておく必要がある。ここでいう「基本」とは、これまでのエントリーに書いたような「大きな構図をもとに、やるべきことを行う」「陥りがちなミスをしない」ということであろう。


「理解の秘密」はインストラクションという視点からコミュニケーションを捉え、そこでのポイントを押さえた一冊であった。「インストラクション」の例としてマニュアルに重きが置かれているものの、一般のコミュニケーションに置き換えられるものが多く示されており、参考になる一冊だった。


理解の秘密―マジカル・インストラクション (BOOKS IN・FORM Special)

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