[思考術]「物語編集力」

「物語編集力」を読了。示唆深い本だった。

物語編集力

物語編集力


本書では、物語を編集のアウトプットの一つと捉え、その構成要素として、
 ・ワールドモデル(世界構造)
 ・キャラクター(登場人物)
 ・シーン(場面)
 ・ストーリー(スクリプト、プロット)
 ・ナレーター(語り手)
をあげている。これら5つのいわば変数をあれこれ動かすことで物語が作られていくことを、ISIS編集学校での実際の成果物を紹介しながら示している。

上記5つの要素そのものについて語るのはあまり有意義ではないだろう。本書でも記載があるし、キャラクターやストーリー、ナレーターなどは小説技法の本にも紹介されていることだ。また、作り方からすると、映画やドラマ系に近い内容があるのかもしれないそれよりも、何となく並列に書かれている5つの構成要素がどのようにアウトプットにつながっているのかを整理してみると、いろいろ見えるものがあるかもしれない。


上記5つの構成要素は、次のような関係になっている。

1.物語の原型を作る:ワールドモデル+キャラクター
  ワールドモデルとキャラクターの関係は、受け皿とその中で動く人というようなものだ。どのような受け皿の中でどのような特徴をもった人が動くのか。物語というのは極論するとこの二つの関係性の中で構築される。ここでワールドモデルとキャラクターの設定によって、自分の意図は反映することが可能になる。

2.物語の原型を編集する:シーン+ストーリー
  1で作った物語の原型を切り刻み(シーン)、それを並べ替える(ストーリー)。これによって、同じ物語原型でも自分の意図をより強調することが可能になる。

3.物語を語る:ストーリー+ナレーター
  ストーリーは2と重複するがご容赦。編集がすんだら、あとはそれをより効果的に伝えることを考える。そのときには、どの順序(ストーリー)で、どのような見え方(ナレーター)でというのが工夫の余地のあるところである。


ここで重要なのが、「自分の意図」であろう。自分の意図と整合性のとれた物語の原型を構成しているか、自分の意図をもっとも効果的に伝える編集や語りとなっているかが重要である。本書で惜しいと思われるのは、実はこの点である。編集学校での実際の成果物としての物語はいろいろ出ているのだが、どのような意図で物語を作ったのかが見えないので、一見してどこが効果的でどこが効果的でないか判断がつかない。結果物語の突飛さという点に目がいってしまうし、講評の観点もどちらかといえば表現技法的な側面に寄ってしまっている。

という本書の感想は脇に置いて、本書の内容を材料にして特にビジネスシーンを中心にどのように活用できるのか、を考えていきたい。それは、次回以降で。