[思考術]「物語編集力」3

割れながら漠としたテーマを選んでしまったような気がしてならないが、本書による示唆はまだあっただろうと感じたので、もう一回だけ引っ張ることにする。

以前のエントリーで触れたように、物語編集力の5大要素をもとにすると、
 ・物語を作る:ワールドモデル、キャラクター
 ・物語を編集する:シーン
 ・物語を語る:ストーリー、ナレーター
となる。これらは物語の構成要素として必要なものだが、どうやって作り出すのかを仮説レベルであげておきたい。

1.ワールドモデルとキャラクターは「目的」と「自分の考えやすいもの」で作る
  「物語編集力」にあげられている物語を見ると、「ワールドモデル」と「キャラクター」の創出に工夫の多くが割かれているように感じる。ただ、単に頭を使うだけでいいワールドモデルとキャラクターができあがるわけではない。それらは「物語を語る目的」にあったものでなければならない。それがとっかかりの一つであろう。では、目的に沿ったものならなんでもよいのか、というとそういうわけではない。それに加えて「自分が考えやすいワールドモデル、キャラクター」というのがあるだろう。

2.シーンとストーリーは「作った物語」を「受け手」で再構築する
  できあがった物語は、どのように分節化して並び替えられるか。ここで「受け手」が登場する。受け手の理解及びインパクトを考慮しながら物語を分節化して並び替える。大切なのは「受け手」であり、ここで自分の趣味を追求してはならない。


3.ナレーターは「編集された物語」に「リアリティ」を加える
  編集された物語を誰に語らせるか、といえば「現実に語らせることができる人」であろう。いかに荒唐無稽な物語を作ったとしても、ナレーター自体が荒唐無稽だったら何がなんだかわからなくなる。ここでいう「現実に語らせることができる人」とは、語ろうとしている物語と何らかの関係をもっている、という意味であり、実際に語れるかどうかというのは問わない。だから森の中の一本の木や、そこらへんに落ちている石ころでもナレーターとなりうる。それが物語りを見ることのできる立場ならば。

と書いていくと、企画〜伝達の過程で注意すべきことが順を追って押さえられていることがわかる。企画自体を考える際には「目的」に沿って「自分の頭にあるもの」を題材に発想する。そして、できあがった企画を文書に落とすときには「受け手」を意識する。最後にそれをもとに発表(プレゼン)するときは、自分自身が「話者としていかに適任か」を聴衆に示さなければ「リアリティ」が生まれない。

以上、本書については消化不良の部分が多かったことを実感した。だらだらと三回も考察を書き連ねたが、頭を揺さぶるのにはいい本だったと思う。


物語編集力

物語編集力