聞く技術

先月、「聞く」ことに関する新書を二冊読んだ。

〈聞く力〉を鍛える (講談社現代新書)

〈聞く力〉を鍛える (講談社現代新書)

人間関係が10倍よくなる「聞く技術」 (角川SSC新書)

人間関係が10倍よくなる「聞く技術」 (角川SSC新書)


そういえば、昨年こんな本も読んだ。

ビジネスマンの「聞く技術」―コミュニケーションを変革する最重要スキルの磨き方

ビジネスマンの「聞く技術」―コミュニケーションを変革する最重要スキルの磨き方


世の中、「聞く」ことに対する関心が高まっているらしい。他にもサンプルとなる本はあるのだが、とりあえず目に付いたこの三冊を題材に、「聞く」ことについて考えてみたい。

まず、三冊ともに共通しているのは、「聞く」本でありながら、どれも「聞く」場面に関する記述は意外と少ない、ということがあげられる。どちらかといえば、「話を聞きだすための技術」「聞いた話に対応する技術」に関する内容が多い。これは、コミュニケーション手段における「聞く」ということの特徴に関係するのではないだろうか。ということで、特に「書き物によるコミュニケーション」と比較して、「聞く」コミュニケーションの特徴をいくつかまとめてみた。


・一過性のコミュニケーション手段である
 口頭での会話は一期一会である。言われたその場で理解できないと基本的にはアウトである(もちろん言い直してもらうこともできるだろうが、言い直しの際には後述する「ちゃんと聞いていない」という感情が加わった内容となる)。また、一過性を別の観点から捉えると、インタラクティブ性が高いといえる。仮にその場で確認ということをするとなると、インタラクティブ性は高まる。

・省略の多いコミュニケーション手段である
 コンテキストや非言語コミュニケーションに依存することが多いため、話している言葉だけ聞いていると何を言いたいのかわからないものがある。にも関わらず通じてしまう。省略されるのは主に、主語・述語あたりだろうか。付け加えると、特定の単語はすぐに指示代名詞化してしまう。

・コンテンツ以外のものも伝わりやすい
 非言語コミュニケーションを活用できることで、感情も同時に伝えることが容易になる。裏を返すと、伝え手は感情を伝わるだろうと期待している可能性が高い。


以上を「よりよく聞くためのコツ」という観点でまとめると、次のようになるだろう。
・コンテンツだけでなく、感情の理解にも努めるべし
・コンテンツは言われた中身にコンテキストや非言語の意味を素早く加えるべし
・インタラクションを有効活用すべし


また、上述したとおり、「聞く」というのは以下のような3段階をとるらしい。
1.話を聞きだす
2.話していることを理解する
3.理解したことを示す
なんだか大変なことになってきたが、次のエントリーでは上述のコツをこの3段階に当てはめてみていきたい。


注:「聞く」ことをしながら、上述の特徴にあてはまらないものがいくつかある。留守電のメッセージや、テープに収録された講演等を聞くことである。ここには一過性はないし、省略は極力なくそうとするだろう。まあ独特な場面なのだろう。と書きつつ、今あげたものも含む「聞く」特徴を思いついた。それは「時間拘束性」である。少なくとも、聞き手は話している間はその時間を拘束されるわけだ。そこで、聞き手はいろいろなことを考える。拘束された時間がもったいないとか、他に・・・をしなければとか。そうすると、中身の理解が疎かになるのかもしれない。


以下余談。

最後のくだりを、予備校時代を思い出しながら書いた。浪人時代、S予備校でお世話になっていた私は、残念ながら優等生ではなかった。そのため、試験によってクラスが振り分けられる二学期は世界史の授業を人気講師のO講師で受講できなかった。但し、O講師はとにかくしゃべるだけのクラスなので、録音すれば授業は再現できる(一方日本史のA講師は同じ人気講師でありながら板書勝負だったので、録音しても何がなんだかわからない)。ということで、テープに録音してそれを家で聞く、というやり方をとることにした。結果は・・・、当然ながら数回でギブアップ。家で一時間拘束されることがもったいなかったのである。しかも、テープだからという理由で聞き方が安易になり、結果として理解できない部分が出てくる。そこを聞きなおしをするとさらに時間がかかる。まったく有効な学習法でなかったことを覚えている。