最強の読書術(2)

前エントリーで、東洋経済の特集「最強の読書術」で紹介されていた6名の達人の読書術を比較してみた。いったん個々の達人の読書スタイルを見てみようと思ったが、ここは人による好みの差も反映されるのでやめて、達人の読書術に見る、読書の2パターンの特徴を考えてみたい。

達人の読書を見ていると、大きく二つのパターンに分かれる。
(1)情報収集のための読書
(2)思考を戦わせるための読書

(1)については三輪氏以外のすべてがその方法を紹介し、(2)については佐藤氏、三輪氏、齋藤氏の三名にそのやり方が紹介されている。当然のことながら、両者には大きな違いがある。

1.一冊あたりにかける時間
 当然であるが、一冊あたりにかける時間は(1)は短くなり(2)は長くなる。つまり、(1)はできるだけ短時間で読み終えることを目標とし、(2)は時間というファクターは度外視して一冊の書物からのインプットを最大化することを目標としている。特に(1)については達人のアプローチは極端とも言えるほどのものだ。それは読書量(月に100冊ということは日に3冊)読むということは、情報収集の手段として捉えなければできるものではない。事実佐藤氏は、熟読は月5〜6冊が適正と言っているように、思考を戦わせることになるとそう短時間で読み終えるものではない。ここはメリハリが必要で、中途半端な読書はどちらにもならないということだろう。


2.活用の仕方
 (1)のパターンでの活用の仕方は人それぞれ。線引きをする人、メモをとる人、まったくなにもしない人様々だ。これは、情報収集といってもどのような情報を収集したいのかによって変わってくるからだろう。勝間氏のようにフレームワークの収集と割り切れば、メモをとるほどの情報が一冊の本に入っていることはない(フレームワーク集のような本は例外だが、達人たちはそこで紹介されるフレームワークくらいは知っているだろうから、一冊当たりに新規で出るフレームワークは少ないと考えてよいだろう)。一方、本田氏のようにその本に入っている考え方を使いこなす、という観点で読書するなら、当然線引きやメモをしておく必要がある。要は一冊の本から何を吸収したいかによって、活用の仕方は変わるのだろう。
 一方、(2)については再読することも念頭に置いた上で、最大限その本で述べていることを吸収し、自分の意見を戦わせることができる土壌を作ることが必要になる。それは三輪氏のようなメモになって、メモで意見を戦わせたり、齋藤氏のように三色ボールペンの色で自分の考えを繰り出すこともできる。ここは収集する情報次第という軸ではなく、考えを戦わせやすいかという軸でやり方が決まってくるのだろう。

3.読書の幅
 本田氏と齋藤氏のコメントを見ると、興味深いことに同じことをまったく別の考え方で述べている箇所がある。それは読書の幅のところだ。同じテーマの本を何冊も読むことを、本田氏は「多読」と表現して偏りのない情報収集をするためのものとしている一方、同じようなアプローチを齋藤氏は「毎月テーマを決めて」とより突っ込んだ理解のためのものとしている。ここに情報収集と思考を戦わせるアプローチの大きな考え方の違いがあるように感じる。情報収集という点から考えると、本に入っているのは情報だから狭い幅のものを収集していることになる。従って、似たようなジャンルの本を読むことで情報を「補う」ことになる。一方、思考を戦わせるためにはある程度バックグラウンドが著者とあっていないと話にならない。従い、似たようなジャンルの本は思考を「深める」ことになるのだ。ここでも、各本をどのように位置づけるかによって、読み方は変わってくる。


以上三点ほど情報収集と思考を戦わせる読書のアプローチの違いについて見てきた。結局はその人の読書の仕方は最適化されて、達人たちのやり方はその最適化が極端な形となってあらわれたものと見ることができる。そういった末節に捉われることなく、情報収集なのか思考を戦わせるのかという目的をまずはっきりさせることが重要なのだろう。その上で自分なりのカスタマイズになっていくのではないか。