実行力あれこれ
思うところあって、「実行力」というテーマに関する本を何冊か読んだ。
まず一冊目は定番とも言えるこちら。
- 作者: ラリー・ボシディ,ラム・チャラン,高遠裕子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2003/02/14
- メディア: 単行本
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「実行」が売りの経営者とコンサルタントの共著。内容としては、「経営では実行がもっとも大事なんだよ」と、何かタイトルそのまんまのものだった。「実行を支えるための行動」として、以下のような7つほどのポイントが列挙されていたが、何と申しましょうか、それで実行に移せるかどうかというと、やや「?」と言わざるを得ないようなものだった。
- 自社の人材や事業を知る
- 常に現実を直視するように求める
- 明確に目標を設定し、優先順位をはっきりさせる
- 最後までフォローする
- 成果をあげたものに報いる
- 社員の能力を伸ばす
- 己を知る
いやー、確かにそのとおりなのだが、本書以外でも書かれているようなことばかりだ。つまり、「当たり前のことをしろ」ということ? となると、我々は何故当たり前のことをできないのか疑問になる。
という疑問を持ちつつ、二冊目に行ってみよう。
実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか (Harvard business school press)
- 作者: ジェフリー・フェファー,ロバート・I・サットン,長谷川喜一郎,菅田絢子
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2005/12/23
- メディア: 単行本
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こちらは、実行を妨げる要因をまずあげ、その対処法をまとめる、という点で前著より一歩踏み込んでいるか。ちなみに、実行を妨げる要因として、
- 言葉を出しただけで満足する
- 前例が思考を妨げる
- 恐怖心
- 評価方法
- 内部競争
の5つをあげている。これは結構なるほどね、という感じだ。さらに、これら5つの要因が何故起きるかについても説明があったりする。例えば一番目に関することとして、「何故言葉が重要視されるのか」という理由を、
- 発言はその場で認められるが、行動が認められるには時間がかかる
- 斜に構えた発言はスマートに見える
- 発言の多い人は目立つ
としているが、結構納得感がある。
ただ、処方箋的な部分はかなりお粗末。というか、単なるコインの裏返しじゃないか、というのが率直なところ。
例えば、「空論を省くための手段」として「現場に関わってきた人を経営幹部に据える」とか、「組織から恐怖心を追放する方法」として「悪い知らせを伝えた人を高く評価する」というのを見ると、結構なえる。こういう風な安直な評価基準の追加は組織に混乱をもたらすだけだ、ということに気づいていないのだろうか?
と二冊見てきたが、両書に共通しているのは「実行力のある組織にするための方法」という視点からの本である、ということ。つまり、経営者としてどのように組織をマネジメントすると実行力がつくのか、という観点から書かれている。だから人の評価とか文化や風土の醸成的な話が多くなるのだ。もちろんこうした施策も重要なのだろうが、それだけで個々の社員が本当に「動かない」→「実行する」へ移行するだろうか? そういう外的な刺激だけでなく、個人の行動に焦点を向けないと、なかなか実行する組織に至らないのではないか、というのが両書を読んだ感想。
では、「実行する組織にする」という観点ではなく、「実行する人になる」という観点からの本はないだろうか? 実はありました。それは次回に。