実行力あれこれ(続)
「実行」と名のついた本を読めど、マネジメントとしてどう組織構成員に実行させるかというものばかりで、個人レベルに落ちたものはなかなか見当たらない。と思ったら、こんな本を見かけた。
意志力革命 目的達成への行動プログラム (Harvard business school press)
- 作者: ハイケ・ブルック,スマントラ・ゴシャール,野田智義
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2005/03/24
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (15件) を見る
うーん、このタイトルといい、表紙の白い獅子?といい、そのセンスについていけていないが、中身はドン引きになるようなものではなかった。というより、前エントリーの二冊よりよっぽど有意義であった。
まず本書では、個人が行動に移すために「エネルギー×集中力」が必要と説いている。なるほど。と同時に、実行を決断する前後では、人のマインドはまったく異なるものであると解明している。特に後者については納得度が高い。私もいろいろ決断する場面はあったが、うじうじ迷っているときと決めた後とでは、マインドが全然違う。とにかく、実行云々で悩んでいないで、本書で例示しているように、まさに「ルビコン川を渡れ」ということなのだろう。
閑話休題。
前者の「エネルギー×集中力」に戻ろう。これは相当ベタな要素だが、確かに行動に移すときにはとても大事であるのは事実だ。物事を実行できずにいるのは、まさにエネルギーが欠乏しているか、集中できていないかのどちらかなのだろう。
さらに本書では、両者を改善するための処方箋まで書かれている。まずはエネルギーを取り戻すプロセスとして大きく二つ。
- 意欲的な目標(成功可能であり、自信がもてて、明確)を身につける
- 目標達成の行動を取る際、自分の感情をコントロールする
では、集中力を高めるにはどうするの?
- 頭の中に自分の意図を描く
- 個人的なコミットメントをする
- 問題の所在を整理する
- 結果を頭の中に描き、目標にコミットする
うーん、ここら辺から怪しくなってきたなあ。結局はどちらも自分の意図を明確にして、それに(様々な阻害要因に負けずに)コミットすることが肝となる。それだったら、わざわざエネルギーと集中力に分ける必要はないだろう。といいたくなるが、ここは好意的に「物事を実行に移すには、とにかく何をしたいのかを明確にして、余計なことに気を捉われずに邁進すべし」といいたかったのかな、と捉えておく。いろいろぐちぐち書いたが、結局のところ行動に移すにはもっとも大事な要素だ。「四の五の言わずにやれ!」というのも、まさに「やりたいことを明確に」「余計なことは忘れて」「やる」ということだし。
上記をまとめると、次のようなステップになる。題して「意志に基づく行動のステップ」。
ステップ1:意図を形成する
ステップ2:自分の意図に無条件にコミットする
ステップ3:自分の意図を防御する
ステップ4:意図から自分を解放する
ついでに、もう順序も何もあったものではないが、じゃあコミットはどうすればできるの?という問いにも本書は答えている。題して、「自分の行動に責任をとる」
- 自分のしていることを心から好きになること
- 自分には選択肢があることに気づくこと
- ある選択肢に無条件にコミットすること
個人的には、二番目の「自分には選択肢があることに気づくこと」というのは結構重要に感じる。自分がやらされていると感じているものも、結局は主体的に選択した結果である。このような観点をもてるかどうかで、自分の行動に対する責任や、やろうとしていることに対するコミットは変わってきそうである。
ちなみに、本書の後半は組織としての実行力をつけるには、というお題だったが、こちらはかなり寒い。まあ結局組織全体のマインドの状態に即した対応策を考えよう、ということなのだが、これだったら組織変革系の本の方が詳しい。また、アプローチ名も「竜退治」「王女獲得」「王女の門に待ち受ける竜」と、かなりドン引きするようなものだったりする。
と本書全体を通じたテイストは好みが分かれるだろうが、実行実行といっていて表面的な行動やきれいごとで終わりにするのではなく、突っ込んだ分析が見られた好著だった。