フリー 読了

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

遅ればせながら本日読了。非常に読みやすい上に、示唆深い一冊だった。
ざっくり個人的に解釈してしまうと、本書はデジタルにおける無形物の価値について書かれたものであろう。これは、二つの特徴があると筆者はしている。
 ・限界費用が限りなくゼロに近い
 ・すぐに得られるのはキャッシュではなく、注目と評判
ということは、いかに注目と評判をキャッシュで生み出せるかが、無形物でデジタル化できるもの(つまりほとんどの無形物が該当するわけですが)でのポイントになる、ということか。注目・評判→キャッシュへの道を作るのは希少性である、というのはやや当たり前すぎる印象を受けた。

むしろ、個人的には中国やブラジルでの事例が興味深い。中国での海賊版は必ずしもアーティストにとって悪ではない、という見方。発想の転換と言ってしまえばそれまでなのだが、えらそうに「知的資産」とか考えていた人間にとってはなかなか踏み出しにくいハードルなんだな、と。

で、自分の仕事はどうよ、と振り返ってみると、さすがにフリーというのは現時点ではありえないでしょう、という小市民的な結論に至る。というのは、すぐに注目と評判を集めるような仕事じゃないと、到底キャッシュに至らないでしょう。それじゃあ、いくら限界費用がゼロとはいえ(ゼロではないんですけどね)、かなりつらいのです。つまり、このモデルが現時点で成立するのは、あくまでも相応の知名度を持っている人か、運よくフリーにして知名度のあがる一部の人くらいなのではないか。そうでない人間にとって、フリーのビジネスモデルを構築するのは恐ろしく勇気のいる行動だ、という結論になったのでした。

とはいえ、売れている理由のわかる一冊でした。