ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

入院中に読んだ一冊がこれ。結構分厚いので時間がもつかと思ったが、半分近くが付録と補注だったため、二日で読了。それだけすることがなかったということです。

まず注目すべきは、背表紙の帯でしょうか。いきなり「ドラッカー」と大書してあり、その下に小さく「を受け継ぐ在野の経営学者」ときた。まさに世はドラッカーブーム。こんなところにもそのあおりがきていました。

中身は、ビジョナリー・カンパニーシリーズおなじみの、詳細な調査に基づく企業が衰退する段階を説明するというもの。紹介する企業も、これまで紹介してきたものがほとんど。ということは、これまで「偉大」とされてきた企業も衰退するのか、ということで、前著に対して疑念をもたれるのではないかと勘繰ってしまうが、そこのところは早めに手を打っているのがこうしたデータを使いこなす一人者なのでしょう。

やはりこうやって丁寧に比較を繰り返し、その意味を読み取ることで示唆深い結論が出てくるのだな、と改めて感じる。ここでの比較や意味の読み取りは、9月に発売される拙著でも触れているところで、その素晴らしい実践例だ。

衰退の各段階についての著述は本書に譲るにして、個人的に興味を持ったのが第二段階の「規律なき拡大路線」。HPの例もそうだが、過去数十年かけてたどった成長と同じ規模の成長を数年で実現してしまう。投資家の期待というところもあるが、冷静に考えればこれは異常だと言わざるをえない。しかし、これは企業だけにとどまらない。国家も景気も野放図な拡大を続けて、突然にっちもさっちもいかなくなる。こうした経験を人間は何度も繰り返している。この「拡大」を可能にするメカニズムというものに非常に興味をもった。

ボリュームは前二著と比べるとやや控えめ。付録が多いので、「まだまだ」と思って読み進めると、突然本編が終わってしまう。心して読まないといけないだろう。