パフォーマンスコンサルティング2解読(7)リフレーミング

匠の世界第二弾はリフレーミングだ。ここが本書の白眉と言ってよいだろう。ある意味、ここにパフォーマンス・コンサルタントとしての価値が凝縮されるのだ。

まず、リフレーミングの意味から。これは「クライアントが述べていることを異なる視点で見てもらう」となっている。この「異なる視点」というのは、ありていに言えばより事業・パフォーマンス寄りの視点、ということだ。つまり、前提として、パフォーマンス・コンサルタントがクライアントから依頼を受ける場合、そのほとんどが戦術・施策レベルのもので、事業・パフォーマンスレベルのものではない、ということになる。確かに、これは一理ある(というか、ほとんどの場合確かにそうだ)。

となると、リフレーミングのもつ意味をパフォーマンス・コンサルタントから見ると「戦術レベル(施策の提供者)の人から、戦略レベルの人(何が必要かの見極めに関わる人)に引き上げてもらう」ということになる。ここが、コンサルタントにとっても勝負なのだ。

では、リフレーミングを成功させるためには何が必要か。一つは説得力のあるロジックだ。これは、第5章までで紹介したGAPS!ロジックが役に立つ。そして、もう一つは「影響力があり示唆に富む問いかけ」だ。二つ目の問いは、その場での話の流れも大きく影響するので、なかなかモデル化するのが難しい。でも、コンサルかどうかにかかわらず必要なスキルだ(数年前、「コンサルタントの質問力」なんて本も売れていた)。本書では、どのように解説しているのだろうか?

まずは、よい問いをするためのコツを紹介している。具体的には以下三点だ。
  ・オープン・クエスチョンであること
  ・特定のソリューションや原因にとらわれないこと
  ・質問の焦点がGAPS!マップの特定箇所に絞られていること

私が言うのも僭越ですが、結構いい線をついていると思う。まず、オープン・クエスチョンにして、幅広い観点から考えてもらう。個人的には最初にいくつかクローズな質問をしておいて話の流れを作ってからオープン・クエスチョンに入る流れになると思う。
二番目のポイントは重要だ。いきなり原因やソリューションを質問するのは「決め打ち」になる。それが本当の原因ならよいが、そうでなかったら大変なことになる。では、どうすれば二番目のポイントを守れるだろうか? それは「状態」「ハイ・パフォーマーの行動」を問うことだろう。「どんな状態ですか?」「何をしていますか?」といった質問で「我慢」することが大切だ。
三番目のポイントも大事だ。漠然とした質問になってしまったら、リフレーミングどころではなくなる。その意味でも、GAPS!マップのどこの質問かを最初に言ってしまうとよいのかもしれない。

続いて、具体的な質問の流れを説明している。ここは非常に明快だ。「クライアントの問題意識のある方(事業orパフォーマンス)のあるべき姿から入り、ソリューションまで言ったらサイドチェンジして、もう一方のあるべき姿に移る」というもの。この「サイドチェンジ」というところが憎いね。

本書はその後、ミーティングの流れの説明がある。ただ、これはある意味当然と言えば当然の流れなので、ここでは割愛(まとめるのも疲れてきたし)。

この章の最後は、こうしたリフレーミングを行おうとしても、なかなかうまくことが運ばない場合の対応策が解説されている。確かに、いかにコンサルタントが意気込んでも、クライアントにその気がなければ話にならない。ここは結構ハードルになるようで、第10章のよくある質問でも、最初に類似の質問が出ている。

まあ、確かに本書で書かれたようなアプローチがよさそうだが、ここは文化的な違いもあって、日本で必ず通用するというわけではなさそうだ。特に「外部のコンサルタント」が「大手企業で綿密に検討してから依頼している」場面では、いきなりリフレーミングは難しい。そこはまさに押したり引いたりの世界だったり、いうことを聞きながら何気なくあるべき姿や現状に戻ったりするという、まさに「匠」の世界となっていくのだろう。