ケルン・コンサート  キース・ジャレット

ザ・ケルン・コンサート

ザ・ケルン・コンサート

このCDを買ったのは確か2002年か2003年か。同時に買ったもう一枚のCDとともに、その後の音楽ライフを決定づけた一枚だ(その「もう一枚」は別の機会に)。このCDを購入してから、堰を切ったようにキースのピアノソロのCDを買い始め、現在ではほとんど所有している。

キース・ジャレットといえば、ピアノソロでの即興かスタンダーズ(ピアノ・トリオ)かの2パターンに大別できる(ほかにもカルテット系とかクラシック系とかあるが、それは割愛)。これは前者の代表作。というか、ピアノソロの即興をライブでやるという人は、ほかにいないだろう。したがって、本作がピアノソロでの即興演奏の代表作になる。

キースのピアノソロを聴いたことのある人はおわかりいただけると思うが、最初に聴いたときは「なんじゃこりゃ?」という捉えどころのさなを感じるだろう。確かに美しいメロディーや印象的なフレーズもある。しかし一方で、同じようなリズムを延々と続けたり、現代音楽なのかなんなのかわからない、悪い言い方をすれば子供が適当にひいているようにさえ感じる部分もあったりする。そして長い。最近は短くなってきたが、昔は40分近く連続して演奏している。それに曲名すらついていない(パート1とかパート2とかしか示されていない)。そして、極めつけはあの「声」。うなったり感嘆したりする、何とも形容しがたい声がピアノの音色とともに聞こえてくる。「あの声さえなければ最高なんだけど」という評価もあるようだ。でも、次第にその世界に引きずり込まれていく(人もいる)。

このCDは中でも、美しいメロディーや印象的なフレーズの比率が高く、何が何だかわからない部分が少ない点で、キースの入門編でもあると言える。順を追ってみて?いこう。

冒頭は印象的であり美しい。この冒頭の美しさがこのCDの素晴らしいところの一つだろう。もちろん次第にキースの世界に入り込んでいくが、あまりくどくない。パート2になるとリズム先行でメロディーを載せていくという、いかにも即興的な構成になる。このあたりから聴いている側も混沌としてくる。その混沌が終わるとアンコール。これがまた美しく印象的。いつまでも聴いていたいと思っていると、結構あっさりと終わる。でも、これくらいで終わるのがちょうどいいのかもしれない。とさっくり流して合計約64分。

このコンサートではいろいろなエピソードがある。いわく、当日キースの体調は最悪だった。いわく、ピアノの調子も悪かった。それでこの演奏は奇跡だ、と。まあそんなエピソードを聞かなくても十分だよね、ただ聴いているだけで。

でも、個人的にはキースのピアノソロを聞きたければケルンから入るのがベストだと思うが、このケルンのコンサートがベストだと思っていない。もっと素晴らしいと感じるものもあるし、もっと完成されたと感じるものもある。でも、ケルンはケルンで完成された、素晴らしい一枚だと思っている。