デザイン思考
デザイン思考とタイトルのついた本を、ほぼ同じ時期に三冊ほど読んだ。まあ、屋号にデザインとついているので、少しは勉強しないと・・・。
「デザイン思考が世界を変える」
「デザイン思考の仕事術」
「ビジネスのためのデザイン思考」
「デザイン」という言葉からは、いわゆる「見た目のよさ」や「センスのよいデザイナー」など、独自の感覚で外見を磨き上げるというイメージが浮かぶ。そのデザインに、見かけやら独自の感覚やらとはかけ離れた「思考」という言葉がくっつくのに違和感を覚える人もいるかもしれない。
この三冊から、デザイン思考というものは大きく二つの原則に基づくものだということが見えてきた。一つは、デザイン思考とは、顕在化していないニーズを掘り出すことであり、もう一つは、対象単体ではなく、他との関係性を考慮しながら成果物を考えていく、ということだ。それぞれについて、もう少し丁寧に見ていきたい。
1.デザイン思考は見えないニーズを掘り出すこと
三冊とも、デザイン思考の定義は、「目に見えて悪いと思われるポイントの解消ではなく、利用者が半ば当然と思っているニーズや、不満として顕在化していないが改善すれば効果のあるものに沿った製品・サービスを作り出すための思考法」というものだ。長いね。短くすれば「利用者の隠れたニーズを満たすようなものを作るための思考法」となるかな。
この定義を満たすような製品やサービスが生み出されれば、自然と斬新な製品になったり、見た目にも「おっ」と思われるようなものになるのだろう。ということで、デザインは見た目が主ではない。よいデザインを実現した結果として、見た目もよくなる、というのが正確なところだ。
2.デザインするのは「関係性」
もう一点デザイン思考を定義する上で重要になるのは、その扱う範囲だ。多くの場合デザインと言えば製品レベル、つまり形あるものにとどまることが多い。しかし、ここであげたデザイン思考では、一歩踏み込んで無形のサービスまで対象となる。よく引き合いに出されるのが、バンク・オブ・アメリカの「キープ・ザ・チェンジ」だ(デビットカードの支払額のうち、ドル以下は別の口座に貯金されるというもの)。
この例を見てもわかるように、デザイン思考では単に製品やサービスをデザインすればよいというわけではない。利用者がどのように製品やサービスを利用するのかという観点でのデザインが必要になってくる。そこで脚光を浴びるのが「関係性」だ。
この「関係性」という言葉は結構曲者で、どこまでの関係性と捉えればよいか、という話は残る。製品・サービスと利用者との関係性か、利用者がその製品・サービスを使う状況での、その状況と製品・サービスとの関係性か、はたまた利用者が一連の行動をとる際に利用する他の製品・サービスとの関係性か。このあたりは当然煮詰まっていないし、煮詰める必要もないのだろう。あまり巨視的に捉えてしまうとデザインも漠然としたものになるし、あまり視野が狭いと提供する製品やサービスにとっての最適性を追求してしまうことになる。
いずれにせよ、製品やサービス単体でデザインを考えない、もう少し他にも目を配ることが重要になってきているのだろう。
上記三冊には、単語としては普段はあまりお目にかからない魅力的(難解?)なものが出てくる。エスノグラフィー、プロトタイプ、水平思考、アブダクションなどなど。これらは、三冊に共通していたり、少なくとも二冊にのっていたものをあげてみた。もちろん、個々の書籍には、もっといろいろな単語が出てくる。だが、決してそれらの単語(ツール?)が重要なわけではない。この三冊に出てくる手法は、上記二つの原則を実行するための手段にすぎない。上記二つの原則にのっとってさえいれば、別の手法を使ってもデザイン思考をしているといってよいだろう。
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