発見力の構造

遅ればせながら、下記本を読了。

非常に示唆深い一冊だった。「小金井カントリークラブの会員権相場を見ると景気が見える」とか「プチトマトのへたをとってあるかでホテルの格を見る」という筆者オリジナルの「発見」は脇に置いて、「発見」のためのプロセスや必要な要素が有益である。ただ、そのプロセスや要素は断片的なので、一度整理しておく必要があるだろう。

本書では発見のプロセスを「関心→疑問→仮説→検証」としているが、ここはもう少し丁寧に書く必要があるだろう。そもそも(A)関心を生み出すためには何が必要かといえば、「(1)関心を得る機会」「(2)コミットメント」「(3)きっかけ」の3つである。「疑問」と「仮説」は問いと答えの関係なので一まとめにして「(B)仮説」とすると、(B)仮説を生み出すためには(A)関心に加えて「(4)幅広い視点」が必要になる。さらに、検証して得られたものが「発見(気づき)」であろうから、最終成果物を「(C)気づき」としておくと、(B)仮説を気づきにするには(B)仮説に加えて「(5)検証のための情報」が必要になる。

例えば、筆者が例としてあげている「新幹線のグリーン車で日本の景気がわかる」という気づきを得るまでのプロセスを上記の枠組みで整理すると次のようになる。
(1)関心を得る機会:新幹線で、さらにはグリーン車で移動する機会。
(2)コミットメント:日本の景気を肌感覚で知るものが欲しい、というコミットメント
(3)きっかけ:(1)に近いが、グリーン車の乗客数を比較できるだけの乗車量
(4)幅広い視点:新幹線のグリーン車の乗客数に関する情報量
(5)検証のための情報:ここは本書ではあまり触れられていないが、日本の景気の動向との関連をチェックをしているのだろう

いきなり「関心をもて」といわれても厳しいが、この5つなら自分にどれが足りないかを把握することくらいはできるだろう。ちなみに、本書では丁寧にこれらの要素を強化するヒントの一部が書かれている(これまた断片的だが)。

(1)実はあまり明確には書かれていないが、興味のあることにもないことにも取り組む、という姿勢になるのだろう
(2)ここもあまり明確には書かれていないが、内発的動機付けによるところが大きい。その一つのやり方として「立場」のシフトがあげられる。どの立場でものを見ることが求められているのか、を明確にすることで、新たな気づきにつながる。本書でも、自分はコンサルタントだから云々という記述があるが、まさに自分の立場、その立場での付加価値を意識しているからの記述である
(3)これは比較の視点の豊富さがヒントになる。漠然とものを見ても何も見えないのは、比較ができないからである。なお、この点については別エントリーで
(4)(5)幅広く情報収集することにつきる。特に分野の幅を広げることが重要になる

上記で多分一番重要なのは(2)の立場の部分だろう。個人的には、企業で早く昇進する人とそうでない人との差として、一段高い立場で物事を見ているかどうか、という要素が強いと考えている。しかも、あまりにも上の立場で考えていますよ、と見せ付けるのではなく、立場のメリハリをつけられる人が昇進しやすいのでは、と考えている。これもまだ仮説なので、検証の機会を持ちたいと思う(が、企業人ではないので・・・)。

わき道にそれたが、次回は発見のきっかけを生み出す重要な技術である「比較」について見ていきたい。