コミュニケーションがうまくいかない理由

昨日に続いて、「理解の秘密」を題材にコミュニケーションについて考えていく。

理解の秘密―マジカル・インストラクション (BOOKS IN・FORM Special)

理解の秘密―マジカル・インストラクション (BOOKS IN・FORM Special)

昨日のエントリーで触れた、コミュニケーションの5要素について、それぞれ見ていくのかと思ったら、本書ではいきなりインストラクション(コミュニケーション)のうまくいかない原因について説明を始める(第六章)。それに加え、第十章で触れている「欠陥インストラクション」では、第六章と重複した内容のものもある。

まあ、その意味で本書も十分整理されているとは言いがたいが、ここは自分で整理してみることにしよう。とはいえ、このコミュニケーションがうまくいかない理由については、第六章と第十章をあわせると(重複しているものがあるものの)結構多いので、コミュニケーションの5要素をベースに整理しなおしてみる。

送り手:主に送り手側に起因するもの
 ・送り手がコミュニケーションの重要性を理解していない

受け手:主に受け手側に起因するもの
 ・受け手が十分注意を払ってくれない
 ・受け手が過剰な情報にはまりこみ、本当に知りたいことがわからない
 ・親への反抗に似た反応を呼び起こしてしまう

内容:内容がいまいちなために生じるもの
 ・受け手の観点にあわせて翻訳していない
 ・受け手の理解能力やニーズを考えていない
 ・メッセージが抽象的で、双方の解釈がくいちがっている
 ・情報過多で、趣旨が不明瞭
 ・重要な部分が欠落している
 ・従うことを不必要なまでに強要する
 ・偽りの主張や約束
 ・自己矛盾している

チャネル:チャネル選択に起因するもの
 ・伝達手段の選択が適切でないために、受け手を誤解させる

コンテキスト:コンテキストをうまく活用できないために生じるもの
 ・インストラクションの意図を明らかにするような質問ができない
 ・インストラクションに人間の行動に対する配慮がない
 ・関連情報がない
 ・適切な予告無しに、慣例からはずれる
 ・時間が経過してわかりにくくなっている

一部この5要素とは関係のないものもあったので、それは除外した。

こうやって整理すると、違和感を感じる。一例をあげれば、「受け手の観点にあわせて翻訳していない」というのは、受け手や送り手にも入るのではないか、というような違和感である。ただ、これは考えてみれば至極当然のことだろう。コミュニケーションの5要素は個々が独立しているものでなく、相互に関連するものだから。例えば、「情報過多で、趣旨が不明瞭」というものも、純粋に内容そのものが悪い、というのではなく、受け手の状態次第、コンテキスト次第で、悪いコミュニケーションとはならなくなる。

また、送り手をインプット、内容をアウトプットと捉えると、少なくともコミュニケーションがうまくいかない原因を考えるときには両者を同一のものとみなしてもよさそうである(内容が悪いのは、送り手にそのような内容しか作る能力がない、という捉え方)。

となると、コミュニケーションがうまくいかない理由は、「送り手=内容」と他の要素との相対的な関係によって捉えたほうがよさそうだ、と言える。つまり、「受け手が○○、コンテキストが○○の場合には△△のようなコミュニケーションとなる」と捉えるのである。このような捉え方をしようとすると、再度本書であがった項目を整理した方がよさそうである。

この再整理については次エントリーで。