パフォーマンスコンサルティング2解読(2)あるべき姿と現状を捉える

第3章から、いよいよGAPS!マップの詳しい説明に入る。まずは第3章で「あるべき姿」の捉え方が解説されている。

この章を読む前、最も興味深かったのは
1)事業のあるべき姿はどうやって捉えるのか?
2)パフォーマンスのあるべき姿と事業のあるべき姿はどう整合性をとるのか?
の二点だった。

1)については、あまりにあっさりと解決。ここは「事業の目標」であればよいということ。まあ確かにゼロベースで事業のあるべき姿を考える必要もない。現状の目標を実現するために組織や人をどうするかを考えるのがパフォーマンス・コンサルタントなのだから。

2)も結構あっさりとしていた。ここでは、スター従業員のやっていることがパフォーマンスのあるべき姿としている。これも言われてみれば納得なのだが、やや違和感が残る。例えば、事業環境が変化していて現状のスター従業員のやっていることが必ずしもよいパフォーマンスに結びつくわけではない場合どうするのか、「スター」と言いながら相対的に他の従業員より優れている程度の従業員しかいない場合、本当にパフォーマンスのあるべき姿としてしまってよいのか。こうした場合のあるべき姿の捉え方は是非掘り下げてほしいものだ。


あるべき姿が決まれば、それに対応する現状をあげてギャップを見ることになる。まあ、事業の現状は目標が決まっていればそれほど抽出することは難しくない。特に定量的な売上や利益などが目標となっていれば、現状とのギャップは容易に抽出できる。

問題はパフォーマンスの現状だ。これは、あるべき姿がどのようなものか次第なのだが、本書では面白い観点での整理をしている。「個人のスキルレベル」と「活用頻度」という二軸で見てみる、というのだ。そして、ここでの活用頻度とは職場環境と言い換えてもよさそうだ。

この軸はPCに限らずいろんな場面でお目にかかる。そういえば、WPLでも「個人成長力」と「職場育成力」の二軸で職場の学びを評価していた。メッセージとして、個人にすべての責を負わせるな、職場にも改善余地がないか振り返ってみろ、ということなのだろう。これはコンサルタントとして関わる場合にももっとおきたい視点だ。どうしても個人の育成か組織の変革の片方に視点が偏りがちになるからだ。

こうした感慨じみたことを書いた後でこんなことを書くのは気が引けるが、現状を「個人のスキルレベル」と「活用頻度」という観点で整理することで、大枠で原因を特定してしまっているような気がする。続く第5章の原因を明らかにするところでも感じるのだが、印象としては本書でのアプローチは原因を「追究する」というより「あてはめる」に近いように感じる。まあ、落としどころがある程度決まっているので、あまり変に追求しても仕方ないのだろう。

パフォーマンスの現状の把握の仕方は、アンケートやインタビューという至極まっとうな手法が紹介されている。こんなところで奇をてらう必要はない。ここでの質問項目の作りこみはTips的に非常に参考になる。本書の他の箇所でも感じたが、やはり米国の書籍はこういうところは非常に丁寧だ。

という、あるべき姿と現状とは関係のない話で今回はおしまい。次回は原因について。


パフォーマンス・コンサルティングII~人事・人材開発担当の実践テキスト~

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