問題発見、課題設定についての考察

問題発見、課題設定・・いろいろと表現されますが、つまりは「何を解決するか?」を捉える力。問題解決の前段階で必要とされる力にも注目が集まり始めているようです。本も出てくるようになりました。直近で話題になっているのは、でしょうか。

論点思考

論点思考

今回は、この本ではなく、昨年発売された以下の本をもとに、少し問題発見・課題設定ということについて考えたいと思います。

プロの課題設定力

プロの課題設定力

こうした本であろうとなかろうと、「問題=あるべき姿−現状」というのは、かなり広まっているのではないかと思います。この考え方自体は何ら違和感はないのですが、少し考えたいのが、
「あるべき姿と現状とはどちらから見ればよいの?」
ということです。というのは、上記書籍にたびたび「現状を見てあるべき姿を考える」という記述が書かれているからです。一箇所だけなら多分何気なく書いてしまったと考えるのですが、何箇所も以下と似たような記述があることから、本書の筆者は明らかに「まず現状を捉え、そしてあるべき姿を捉える」と考えているのだと考えられます。

課題設定とは「現状」を見据えて「あるべき姿」を捉えることです。(52ページ)

私は、こうした表現を見て、非常な違和感をもつと同時に、考えてしまいました。そもそも現状からあるべき姿を捉えるというと、現状踏襲型のあるべき姿しか捉えられないのではないか。また、現状が様々ある中、そのどれからあるべき姿を描くのか。

残念ながら、本書ではその大半を「あるべき姿や現状を考えるのに必要な情報を整理する技術」に費やしているため、筆者がどのようにあるべき姿を捉えるのかが明確にはわかりません。ただ、簡単ながら、次のような例が見られます。これが本書での課題の捉え方と見ることができます。

「今現在の顧客リピート率はわずか20%です。これは5社中1社しか再発注しないという状況です。これをリピート率80%、5社中4社の再発注を目指しましょう」(200ページ)

この例では、
・現状の20%がすでに悪いということを所与のものとしていること
・そして80%という数値が何故出てきたのかが不明確なところ
の二点が不自然さを感じるところです。

こうした点を考慮すると、個人的には、次のような捉え方が妥当なのではないでしょうか。
「今年の営業所の目標の一つに、顧客リピート率75%がある。自分の担当地区や他の地区の状況を考えれば、自分は85%程度の顧客からリピートしなければならないな。しかし、現状まだ80%しかリピートしていない。となると、この5ポイント分カバーしきれていないことが問題(課題)だ。」

つまり、
ステップ1:あるべき姿をまず明確にして
ステップ2:それに該当する現状を引っ張り出して
ステップ3:比較してギャップがあればそれを問題(課題)とする
というのがアプローチ的には自然のように感じます。

このあたりは明確に示された書籍が見られないため(自分が知らないだけ?)、個人差の大きそうなところでしょうか。