東大生が書いた 問題を解く力を鍛える ケース問題ノート


昨日、アカデミーヒルズで発見したので、ざらっと読み通す。アカデミーヒルズは、本を買うところまでは踏ん切りがつかないが、ちょっと目を通したいような本に出会うのにいい場かもしれない。


本書は、コンサルティングファームで出されるだろう問題解決系の問題に対して、どのようにアプローチしていくのかを解説している。問題と解答プロセスがセットになって合計18問。それに加えて「使える」フレームワークや追加のケース問題(解答なし)が紹介されている。


本書ではいろいろパターン化しているらしいが(ざらっと読みで、パターンの違いはよく認識できず)、ここで取り上げている問題解決のアプローチは以下の5つのステップに集約できる。


1. 解くべき問題を明確にする
ここでは、より状況を具体的にする、ということ。つまり思いつきレベルの出題を「解答できるもの」にしていく。例えば、「新幹線の売り子のコーヒー販売額を倍にする」という問題を、「東京〜新大阪間で、13:00-17:00までに一人の売り子が販売するコーヒーのカップ数を倍にする」というレベルにする、というもの。
2. 問題を因数分解して、構造を捉える
ここは、前著(読んでいないが)で取り上げたフェルミ推定を活用していく。そのための切り口はいろいろ紹介されているが、基本は「マクロで状況を捉える」ものと、「消費者(受益者)の行動ベースで捉える」という二つのアプローチの組み合わせになっている。新幹線のコーヒーのお題で言えば、前者が「現状のコーヒーの売上数」を因数分解していくことであり、後者は顧客がどのようなプロセスを経てコーヒー購入に至るかを捉えること。ちなみに、後者はほぼすべてAIDMA変形のフレームワークを活用している。
3. 因数分解した各要素のボトルネックを捉える
2であげた各要素に対して、「改善することは可能か?」「改善効果は見込めるか?」という観点から評価を行い、あまり打ち手を考える意味のないものはここで除外する。それ以外は4に進む。
4. 手を打てる要素に対する打ち手をあげる
3で生き残った要素に対する打ち手を考える。
5. 各打ち手の優先順位をあげる
4であげた打ち手の優先順位づけを行う。


各ステップに関する印象を(あくまでも個人的な印象です)。
1. 解くべき問題を明確にする
これはあくまでも問題を解くために便宜上設定するもの。従い、ここで問題を設定する能力を見ることができるわけではなく、作法的なレベルは超えていない。ただ、ここで前提をはっきりさせておかないと後で大変になるので、ここをしっかりする意味はある。
2. 問題を因数分解して、構造を捉える
ここはいかにも学生らしさが残るところ。言い換えれば初々しさですかね。さすがにフェルミ推定ブームのおかげからか、マクロから捉えるのは的確だし、結構細かいレベルまで見ているものも多い。こういうところがきちっとできるのは、いかにも優秀な東大生という感じ。
ただ、特に消費者(受益者)側の捉え方は表面的。AIDMA変型版は確かに使えるが、その前に消費者(受益者)のイメージや商品・提供物の特徴などをもう少し突き詰めた方がよいだろう。「ホノルルマラソンの参加者増」というお題だとしたら、単に「海外旅行とマラソン大会の足し合わせ」ではなく、「マラソンの大会がたまたま海外でそれに参加する」というのと「海外旅行のついでイベントでマラソンに参加する」という2パターンの参加者像が浮かぶ(それ以外は正直イメージできない)。この2パターンの参加者像に対して、AIDMA変形を使う方がよいだろう。前者のパターンについては、「なぜホノルルなのか?」という点、後者については「なぜわざわざマラソンなのか?」という点が、打ち手をより掘り下げたものにするいいヒントになるだろう。
3. 因数分解した各要素のボトルネックを捉える
ここは正直、状況(面接中)ということを考えれば、本書で書かれた内容をよいとも悪いとも言いようがない。これもある意味設定の仕方の話。
4. 手を打てる要素に対する打ち手をあげる
ここは正直「もちっと考えてくれよな」と感じるところ。例えば、「マックの売上増」というお題で、夜の時間帯の売上を改善したいと考えて、「夜マックの提供」では、単なるコインの裏返しだ。また、現状の提供形態がイートインとテイクアウトだけで、デリバリがないからデリバリサービス開始(価格の下限設定)は、ケンタッキーの猿まねにすぎない。
では、なぜこんな打ち手になってしまうかというと、因数分解した要素をピックアップするだけで打ち手に進んでいるから。ここはもう一段Why?を考えたり、その要素にはどのような特徴があるのかを考えたりすることが必要だろう。いきなり夜マックに行く前に、「なぜ夜の売上はあまり思わしくないのか?」を考えてみたり、夜に利用する客は朝や昼とどのような違いがあるのかを考えてみると、よりひねりの効いたアイデアが出てくるのだが。ここで「夜利用する客」についてもう一段ステップ2のようなことをしてみると、深みのある分析になったね、と言えるのだが・・・。
5. 各打ち手の優先順位をあげる
正直あまり優先順位をつける基準が見えなかった。たぶん何かあるのだろう。


とまあ、いろいろと書いてしまったが、私のようなおっさんには清々しさすら感じるもので、コンサルティングファーム(だけじゃないけど)での面接対策の第一歩としてはとてもよくまとまっていると感じる。別にコンサルには興味ないという人でも、似たようなアプローチがこれだけ繰り出されれば、かちっと問題解決をしていくイメージはつきやすいだろうから、読んでおいて損はないと思う。



本書を読んでいて非常に気になったのが、フェルミ推定(という呼び方に未だに違和感があるのだが・・・)をよりどころに問題解決していくアプローチが本当によいのか、ということ。ここについては、正直まだ考えがまとまっていないので、また改めて考えたい。


(注)結構読み飛ばしているので、もし指摘したことが書かれていたらすみません。