視座・視野・視点

先週のエントリーで紹介した二冊の本のどちらにも載っている考え方として、「視座・視野・視点」があります。

論点思考

論点思考

プロの課題設定力

プロの課題設定力

この言葉自体は前から耳にすることもありましたが、まとまった形で記述されたものを続けて目にしたのも何かの縁だと思い、少しまとめてみます。

視座・視野・視点は、片や論点思考を高めるためのものと紹介され、片や課題を設定するための基礎と紹介されています。どちらも正しいのでしょう。結局「ものの捉え方」ですな。

従来、ものの捉え方としては「視点」という言葉だけが使われていましたが、それだけでは不十分というので「視座」や「視野」が加わったのでしょう。言われてみれば、確かに捉え方はそれぞれ違うので、視座・視野・視点のセットがよさそうです。

では、それぞれについて、両書で書かれていることをざっと見てみます。
1.視座:「誰の立場でものを見ているか」ということ。「高い・低い」で示される
・現在のポジションより二つ上の視座をもつとよい
 面白いことに、このポイントについては二冊とも載っていました。上の立場に立つと、部下が考えていることがあまりに現場的に見えるのでしょうか。
・相手の視座を読み解く。そのためには相手の「目的」と「期待」を理解する(プロの課題設定力)
・時には視座を下げることも必要(プロの課題設定力)
・視座をあげるには、経験を積むか経験を積んだ人に接するのが一番(プロの課題設定力)

2.視野:「どこまでの範囲をカバーしているか」ということ。「広い・狭い」で示される
・空間軸と時間軸で視野を捉える。空間軸は業務範囲。(プロの課題設定力)
・普段あまり見ていない方向に目を向ける(論点思考)
視野については、二つの本でのアプローチが違います。論点思考は「とにかく広げろ」というもの。プロの課題設定力は「空間と時間に注意」というもの。

3.視点:「どのような点でものを見るか」ということ。「鋭い・鋭くない」で示される
・視点は固定しがち。プライドや先入観が邪魔をする(プロの課題設定力、論点思考)
フレームワークを使いこなす(プロの課題設定力)
・・・
以降、どちらも具体的な「視点を固定させない技術」が紹介されているので割愛(興味のある方は実物をご覧ください)。

こうしてみると、「視点」は「視座」「視野」と比べて、まだ焦点がぼやけているような気がします。だから、具体的な技術の話に進んでしまうのでしょう。どちらの本とも、視点の中には、ある対象に光をあてる「角度」や「焦点の絞り方」、さらには視点をもつ「柔軟性」の話まで入ってきます。こうした「視点を捉える視点」が混在しているので、いろいろな話が出てきてしまうのかもしれません。


こうしてまとめてみて感じることを三点ほど。
1.自在性が大事
まさに視点では自在性が大事になります。それは視座や視野も同様でしょう。えもすると、「視座は高いほうがよい」「視野は広いほうがよい」と考えてしまいがちですが、必ずしも常にそういうわけではないでしょう。そういう意味では、「視座」のパートで清水氏が述べたことは重要に感じます。
特に重要なのは、視座の高さや視野の広さを自由に調整できるということではないでしょうか。
お二方とも視座を高め、視野を広めることを説いているのは、現状私たちは視座が低くなりがちで、視野が狭くなりがちだからでしょうか。

2.ブラッシュアップのヒントに使える
自分が作った成果物をブラッシュアップするときに、この3つを意識しておくと効果的です。「自分はどの視座でこのレポートを書いたのか」「このレポートはどこまでを対象としているのか」「どんな観点からのものか」というチェックをしてみるだけで、成果物のブラッシュアップは効果的になりそうです。
その意味でも、1の「自在性」は重要です。

3.イメージ力は欠かせない
個人的には「視座・視野・視点」とも育てるのに欠かせないのは「イメージ力」だと感じます。いかに視座を高めようとしても、上の人の考え方を理解できなければそれは無理です。ただ、上の人の考え方はその立場にならないとなかなか理解できません。そこで助けとなるのが「イメージ」ではないでしょうか。
どれだけいろいろな人の立場をイメージできるか、どれだけ幅広い相手や将来への影響をイメージできるか、どれだけ違った角度からの捉え方をイメージできるか。こうしたことが「視座・視野・視点」を育成するのには欠かせないのではないでしょうか。